犬が縫い針を飲み込んだ、、、、

 犬って本当に何でも飲み込みます。今までも石、ピアス、トウモロコシの芯、タオル、ストッキング、テニスボール等々。いろんなものを手術して取り出してきました。

 今朝の犬は縫い針を飲み込んだとの事。レントゲン写真を撮ってみると、ご覧のとおり、胃の中に縫い針が、、、、

 飼い主の方と相談の結果、まず内視鏡で摘出を試し、だめだったら手術をすることになりました。


 全身麻酔をかけて、手術台に乗せ、いざ内視鏡を挿入。胃液やら、胃の未消化物にまぎれて、針を見つけ出すのさえ一苦労です。内視鏡から空気をだしたり、胃液を吸い出したり、やっとのことで針を見つけ出しました。

 

 みなさんは、これ位内視鏡で簡単に取れると思っていませんか?

 これが結構難しいんですよ。縫い針の場合、内視鏡の先端から出した鉗子で、針の先端か尾端を捕まえなければ、食道を通して取り出すことが出来ません。

 また、針に付いている糸が、腸に流れて行ってしまった場合、針を引っ張ることで腸を傷つけてしまうこともあります。

 何度か失敗の後、やっと針の先端を掴み、取り出すことができました。

 正直言うと、お腹を開けて、手術で出す方が、何の技術も必要なく、簡単です。ただ、犬にとっては、お腹を開けられるのは大変なことです。

 この犬は、針を取り出した後、薬と一緒にその日の内に、家に帰ることができました。犬にとってはめでたし、めでたしなのですが、こちらは手術以上に疲れた1日でした。

右心房内腫瘍

 13歳のマルチーズ系の雑種の小型犬が、咳をするとの事で来院しました。聴診すると心臓から結構大きな心雑音が聞こえてきます。マルチーズ?咳?心雑音?といえば、私たち獣医師は僧房弁閉鎖不全症(心臓の左側にある弁がうまく閉じなくなる病気)を疑います。でも、何だかちょっと音質が違うような?

 心電図、レントゲン、エコー検査を行うと、右心房内に大きな腫瘍が見つかりました。

 飼い主さんと相談した結果、抗癌剤による化学療法を行うことになりました。3週間に1回のペースで、抗癌剤を点滴しました。2か月半後には、2枚目の写真のように、腫瘍がとても小さくなりました。心雑音も小さくなり、咳も収まってきました。

 もちろん、今後のことはしばらく治療を続けてみないとわかりません。一旦小さくなっても、その後、再び大きくなることもあります。もちろん、癌細胞が全て無くなることもあります。

 抗癌剤というと、ものすごい副作用で、ご飯も食べられなくなり、吐き気が続き、体中の毛が全て抜けてしまうといったイメージがあります。

 もちろん、癌の種類によって使われる薬は違うのですが、最近では、副作用の少ない薬も多くなりましたし、副作用の少ない薬の使い方も工夫されています。

 ご紹介しているワンちゃんも、ほとんど副作用らしきものもなく、現在も治療継続中です。このまま、癌に負けることなく、天寿を全うして欲しいと願っています。

L リトリバーの血管肉腫

  

 

L リトリバーの血管肉腫

 

 

 

 当院では、7-8歳以上の犬、猫には人間ドックならぬ、ドッグドック、キャットドックをお薦めしています。

 

 検査の内容は、血液検査、心電図検査、尿検査、レントゲン検査、心臓、腹腔内臓器のエコー検査です。これらの検査を1日動物を病院にお預かりして、実施しています。

 

 

 

 今回の患者さんのロビンは、もう少しで12歳の黒ラブで、私の愛犬ローラのお母さんです。飼い主さんは保育園を経営されていて、私の娘がお世話になった関係から、昔からロビンを診させていただいていました。

 

 

 

数年前から定期的にドッグドックを受けていただいており、今年のエコー検査で、脾臓に約3cm×2cm×2cmの悪性腫瘍を強く疑わせる病変が見つかりました。

 

 飼い主さんと相談の結果、脾臓を摘出する手術を行うことになりました。

 

 脾臓摘出手術は決して難しい手術ではないのですが、癌の手術の場合、出血や術前に判らないような、小さな転移など、お腹を開けて見なければ、判らない事が多く、最初の予定通り、手術が出来ることは多くありません。

 

 ロビンの場合、幸いにも、腫瘍からの出血も、多臓器への転移も見られず、綺麗に脾臓を摘出することが出来ました。

 

 

 

 術後の病理検査の結果、血管肉腫という、非常に悪性度の高い腫瘍でした。病理医から、腫瘍は脾臓に限局し、多臓器への転移の可能性は低いとの事でしたが、飼い主さんと相談の結果、念のため、数回の抗癌剤(今回の場合、カルボプラチンという薬を使いました。)の投与を行うことになりました。

 

 

 

 血管肉腫は、通常何らかの症状が出てからでは、大きな出血や転移を伴い、術後数日で死亡することも少なくありません。ロビンは全く臨床症状がなく、見た目元気そのものでした。しかし、発見が12か月遅れれば、おそらく助けることは出来なかったと思います。

 

 

 

 ロビンはあと数回化学療法を行う予定ですが、元気に完治する可能性が高いと考えています。それもこれも飼い主さんが真面目に、定期ドック検査を受けてくれたおかげです。

 

 

 

 これまでも、全く元気な犬、猫から多くの初期癌や、心臓病、腎臓病、肝臓病を見つけて、初期治療に成功してきました。

 

 動物たちの多くは、病気の初期症状を訴えません。元気や食欲が無くなってからでは、末期状態であることがほとんどです。

 

 

 

 皆さんも、愛犬、愛猫のために、是非一度、ドック検査を受診してみてください。